サウスウェル競馬場訪問記

5.サウスウェル競馬場訪問記

 いよいよ競馬のお時間です。そもそも今回Nottinghamまでやってきたのは、北アイルランドへ向かうにあたって経由地で開催している競馬場を検索したところサウスウェルが見つかったのがここでした。あらためて見返してみたら、この日の開催地はSouthwellのほかFontwellとSalisburyの昼開催。そして、ナイターはここSouthwellとLingfieldで、Lingfield開催はwater loggingで中止になっておりました。Lingfield前提で計画組んでたら大惨事だったな。行っててよかったLingfield。

5.1 Southwell Racecourseへ

 では、Nottingham駅から競馬場の目と鼻の先にあるRolleston駅へ向かいます。競馬場の目の前にあるのに、駅名からSouthwell競馬場の最寄り感を示すものはなにもありません。Rollestonは、競馬場の反対側にある街ですが、競馬場の方が街よりも駅から近くにあるのであります。

 尤も、私のメモには、

- 前の駅から異常に近い。競馬駅か

 とあったので、印象としてはやはり競馬場駅だったのでしょう。

 そして駅に「Equestrians must not use the wicket gates」などという案内看板が出ているくらい、駅には馬がやってきます。改札口の英語として、turnstileとかgateとかは耳にしてきましたが、恥ずかしながらwicketというのは初めて聞きました。我らがWeblioさんは、改札口の英語としてwicketを出してきつつ、「《★日本では駅などの表示に wicket とあるが, 「改札口」の英訳として適切でない》.」という研究社さんの和英辞典も出してきて、私は軽くパニックです。

ノッティンガム駅
Rolleston駅 馬は改札口を通ってはいけません wicket

5.2 Southwell競馬場について

 そんなわけで、Southwell競馬場は駅の目の前。旅行記としては、ここでSouthwell競馬場
ここでちょっとお勉強という名の尺稼ぎ。

 私にとって、Southwell競馬場の記憶というのは、「本当に何もなかった」というものです。例えばFfosLas競馬場なんかは「冬のWalesらしく寒々しかった」、という、何も無かったら何も無かったなりの記憶が残っているのですが、ここに関しては「何も無かった」という記憶だけが残されていて、最も残っている記憶は帰りの駅で電車を待った記憶です。
 Southamptonからベルファスト(北アイルランド)に行くのにわざわざノッティンガムを経由したのに、我ながら一体何をやっているのだろう。

 その後、日本で目にしたSouthwell競馬場といえば、2018年3月のこのニュース。
 Not exactly a crowd – only 13 paying customers at Southwell on Friday(Racing Post)
 有料観客数が13人だった、というビックリニュースです。日本の一番酷い時期の競輪場でもこんなことはなかったんじゃなかろうか。まあ、今となっては競輪場は無料入場のことが多くなってしまったので、「特観席13人」なら有り得るのかもしれません。
 このニュースを見た私の感想は、「Southwellならこの観客数というのもさもありなん」というう。それくらい、「何も無かった」という記憶だったのです。

 ちなみに、Southwellは2018年には馬の取り違え事件を起こしております(馬の"取違え事件"、再び起こる(イギリス))。イギリス競馬界の金沢か。

 そんな「何も無かった」Sothwellが大きな話題を呼んだのが2024年。英インターナショナルSを制したシティオブトロイ(日本的にはトロイシチーか。シティでなくシチーとしただけで急に愛着が湧きます)が、ブリーダーズカップクラシック出走前に、Southwellで調教をおこなったのであります。BCクラシックにはフォーエバーヤングが出走を予定していたこともあり、日本でも話題になっていました。
 あまり真面目に記事を読んではいませんが、日刊はこたつ記事が多すぎませんかね。ちゃんとRacing Postに利用料払ってるんでしょうか。

 シティオブトロイ、英サウスウェル競馬場でBCクラシック想定の調教実施へ(JRA-VAN)
 料金は0ポンド…シティオブトロイ公開調教の入場チケットをサウスウェル競馬場が発売開始(日刊)
 【デスク便り】ファン1500人が来場?20日は英国サウスウェルでシティオブトロイ公開調教(日刊)
 BC制覇へシティオブトロイ英国で“米国式”試走(スポニチ)
 【BCクラシック】シティオブトロイがサウスウェル競馬場で公開調教 オブライエン師「最高だと感じた」(サンスポ)
 【凱旋門賞】右も左も分からないサウスウェル競馬場で優しさに触れる…イギリス大好き!/三嶋まりえ奮闘記(東スポ)
 BCクラシック狙うシティオブトロイの公開調教でオブライエン師&ムーアを直撃/三嶋まりえ密着取材(東スポ)

 At the Racesが実況したシティオブトロイの公開調教。
 ”City Of Troy Southwell Gallop LIVE!”


 そもそもアイルランドのオブライエン氏がなぜ調教場所としてSouthwellを選んだのか、オブライエン氏のBCへの意気込みが強いことは、以下の日刊の記事(Racing Postからの転載がメインのこたつ記事)からも分かります。
 シティオブトロイのオブライエン師、BCクラシックへの思いを激白「25年間、勝てていない」(日刊)
 欧米圏のことなので、Chat GPTにも英語で聞いてみたところ、以下の4つの理由が返ってきました。特に真新しいことはありません。
1 Simulating American/dirt-style conditions
 Although Southwell is a Tapeta (synthetic) surface rather than true dirt, the workout was designed to mimic American-style racing conditions:
 They used American-style starting stalls.
 A group of stable-mates were used to create a strong pace scenario, replicating a race situation.
2 The surface was deliberately prepared to be “slow/standard” and more demanding than a typical all-weather track, to give a hair of the feel of dirt.
3 Familiar but controlled environment
 Southwell offered a British base (near to Ireland/trainer base) where logistics were easier compared to shipping to the U.S. far ahead of time. O’Brien noted that the transition from turf to a completely new surface overseas was riskier, so this was a stepping stone.
4 Public and media friendly showcase
 The gallop was open to the public, welcoming fans, media and giving exposure both to the horse and the venue. It served as a promotional and confidence-building exercise.

 なお、シティオブトロイはオブライエン氏の意気込みも及ばず、シエラレオーネの8着に敗退。3着にして翌年覇者のフォーエバーヤングからも大きく離された敗戦となりました。まあ、何事もチャレンジです。今回の調教が成功であると考えているならば、次回の挑戦時にもSouthwell競馬場が調教場所として選ばれることでしょう。


 Southwellについて、「なにもない」と悪口を書いてきましたが、色々と改革も進んでいるようです。どうも、日系企業のMusco Sports Lighting Japanが、サウスウェル競馬場の照明設備に参画したようです。同社のYouTubeにも挙がっています。なお、過去の動画を見ていると、四日市、熊本、岐阜、平塚、函館の各競輪場や、長崎スタジアムシティなんかの照明も取り扱ったようですね。



 また、2024年から、ウインターダービー(G3)がLingfieldからSouthwellに場所をうつしたようで、これはSouthwellでおこなわれる初めての重賞競走であるとされております(大きな反響を呼ぶイギリス競馬の改革)。
 ただし、2026年から再びLingfieldに戻るとのことなので(BHA confirms transfer of Winter Derby fixture from Southwell to Lingfield Park)、やはりSouthwellはSouthwellだった、ということかもしれません。なお、Heverステークスも同じくSouthwellからLingfieldに戻るとのことです。これを書いているのは2025年11月ですが、2026年2月21日のWinder Derby & Hever Stakes DayのLingfieldのチケットは10ポンドから発売されていました

 このほか、”サウスウェル競馬場”で検索したところ、以下の記事が見つかりました。
 欧州競馬に現れた超新星 馬なりでラスト1F11.0、デビュー2歳馬末脚に衝撃の声「信じられない」
 失礼ながら、THE ANSWERというポータルサイト自体知らなかったんですが、とにかくラスト1F11秒で走った馬がいたようです。なお、このNight Raiderは2025年のナンソープS4着はあるものの、現時点では基本的にはAWでしか力を発揮できないようです。2025年はこのあと凱旋門賞ウィークのアベイユドロンシャン賞を走ったようなので(15着)、生観戦した日本人も多そう。冬場の中東遠征はしないのかな。

 そんなSouthwell競馬場が生んだスターが、女性騎手のヘイリー・ターナー元騎手です。後述しますが、場内には写真も飾られています。例によって、日本語版Wikipediaもあります。2015年にはWAJSにも出場してたんですね。知りませんでした。私はこののち2016年のシャーガーカップでお見かけしていたようです。特に意識はしていなかったので、シャーガーカップ時に何かを意識したことはありません(よって、旅行記(シャーガーカップを先に書いている)にも特段の記載がありません)。
 パッと検索したら、スポニチが引退を報じていました(英女性騎手ターナー 思い出の地で引退決意)。この「思い出の地」が、サウスウェルでありますね。


 こんなサウスウェル競馬場ですが、もちろんターナー騎手のWikipediaを書く人がいるくらいですから、当然日本人も多数訪問されております。真っ当な紹介は以下を参照。
 【総合評価△】競馬場探訪:英 サウスウェル競馬場/Southwell Racecourse(小和田逸平さん)
 これも英国競馬サウスウェル競馬場~(トークンさん)
 Japanese ScouserさんのVlog
 これは英語ですが、このVlogも分かりやすい(英語もわかりやすい)

5.3 入場&Charity Race

 Google Mapのストリートビューを見たら、駅前に馬が放牧されてますね。どういう馬なのでしょうか。
 そんなわけで、駅から真っ直ぐに入口を目指さず、1コーナー側の駐車場へ。とりあえず、馬場を見ていきます。簡素な撮影櫓が、地震の無い国であることを示しておりますな。

1コーナーへ 馬運車はこちら 接近します
1コーナーあたりから ちょっと移動してぐるりと

 では、入場口へ。この日の入場料はGrandstand13ポンド。二千数百円です。この競馬場に2000円以上払うのか……。

Gate 関係者窓口 General Admission
私はこっち
チケットゲット
入場口を振り返る 2016年の開催日程表 のちにScanしたチケットの裏表

 続けて、レープロもゲット。


 ここに着いて初めて認識したのですが、実は1レースよりも前にチャリティーレースが組まれておりました。どういうチャリティなのかはよく分かりません。今BHAのResultを見ても、このレースの結果は載ってませんでした。
 名前の目立つWhatsupjackを調べてみたら、2016年3月が最終出走になっているので、引退直後、という感じだったんでしょうかね?あ、でも、Weald of Kentは5月23日に出走し、このレースを挟んで6月25日にもレースを走っているので、バリバリ現役だ。ばんえい競馬に所属している馬がしれっと草ばんばに出てくるのに近いのだろうか。もちろん、こっちはある意味オフィシャルではあるのだけど。

 このチャリティーレースに関する私のメモは以下の通り。おそらくアナウンスを聞き取ったんだと思いますが、私のリスニング能力を考えると、情報の正確性は怪しいです。
- チャリティーレースの騎乗命令がかかっている
- 二番スティーブヒラーがオーガナイザーとアナウンスされている
- 売ってるブックメーカーもある
 よく分からないですが、2番WhatsupjackのジョッキーであるSteve Hillerがレースを主催したようですね。

Whatsupjack High Intensity Velvet Edge
Weald of Kent Betty Boo
レースの様子

 写真を見るに、おそらくWeald of Kentが優勝しておりますが、その後表彰式をやったのかとかも不明です。まあ、なんにせよチャリティなのでこのレースの結果回るべき場所にお金が回ったらそれでよかったというべきでしょう。

 では、気を取り直して場内探索。
 もちろん、Charity Raceを見るために場内をフラフラしてたりもしてますが、そこは順番を入れ替えます。

5.4 場内探索

 では、あらためて場内探索。

入ったところから撮ったもの

 非常にシンプルな競馬場で、スタンドはメインスタンド1つ。The Hall Fast Community Grandstandと呼ばれております。横長のスタンドで、観戦席は非常に簡単な吹きっさらしです。
 中央のみ、複数階層あって上に伸びています。おそらく実況席やら審判席やらが入っているのだろうと思います。

スタンドの様子
 続いて、スタンド内。スタンドが横長なので、必然的に中もすらーっとした感じになります。
 なお、写真上は美味しそうに見えるフィッシュアンドチップスなんですが、当日の私のメモによると、
- 飯がない。フィッシュアンドチップスは無駄にでかいだけでいまいち

とのことでした。残念。

スタンド内へ フィッシュアンドチップスコーナー
(偉そうにFood Courtと呼んでいるようです)
フィッシュアンドチップス Ladbrokesコーナー
スタンド内の様子

 スタンド内には、当地が生んだスター、ヘイリー・ターナー元騎手(2016年当時は現役)の写真が飾られております。この特別扱い、さすがですね。ドイツで初めて重賞を勝った女性騎手、という豆知識も書かれております。この情報は日本語版Wikipediaにはありませんが、英語版Wikipediaにはしっかりと載っております。ドイツで勝ったレースはWikipedia情報だとLando Trophy。まさかのランド杯。急に親近感湧いたぞ。ただし、Lando Trophyのリンク先はHessen-Pokalで、ここにはLandoのラの字もありません。このHessen Pokalは英語版Wikipediaしかなく、ドイツ語版に詳細な説明があったりするわけでもないので、よく分かりません。
 なお、このときターナー騎手が乗った馬はレディドーヴィル(Lady Deauville)。みんなご存じファビラスラフインの妹です。ということは、ジャパンカップを勝ったランドの名前が冠されたレースを、ジャパンカップ2着のファビラスラフインの妹が勝ったということになります。親近感が湧きますね。
 さらに、このレディドーヴィルは日本に輸入されており、2016年きさらぎ賞2着のレプランシュなどを輩出しております。



 そして馬場。ぱっと見、平坦なコースです。
 その前に広がる広い芝生。いいですね。寝っ転がったりして楽しめます。そして、スタンドから馬場が遠いです。スタンドで飲んだくれてないで、馬場の前で飲んだくれろ、という競馬場からの熱いメッセージを感じます。繰り返しますが、スタンドから馬場への距離はありますし、なにより芝の外をオールウェザーコースが走っておりますので、芝生ゾーンから芝馬場への距離もあります。競馬場からのメッセージは、「しっかり競馬を見てくれ」ではなく、「スタンドで飲んだくれてないで、馬場の前で飲んだくれろ」であることがよく分かりますね。
 そしてもう1つ。芝生席から見ると、馬場が少し高い位置にあります。水はけの関係で、スタンド側から流れてきた水が馬場に入らないようにしているのかもしれませんが、いずれにしても観客側からするとただでさえ馬場は遠くて間にオールウェザーコースがはさまっているのに、より一層見づらいです。
 やはり競馬場からのメッセージは、「スタンドで飲んだくれてないで、馬場の前で飲んだくれろ」ということだと思われます。

 当日の私のメモは、
- コースが遠く、高い
- オールウェザーが外回ってるので障害はさらに遠い
- コースは平坦でおおきい。つまらない競馬場
- 東京の障害を見ているつまらなさ
 というわけで、2016年にもなって東京から襷コースがなくなったことへの恨み節を書いている女々しさはさておき、とにかくレースがつまらなかったことを繰り返しているのが分かります。やはり私の記憶は間違ってなかった。

スタンドから馬場を見る。馬場の遠さがよく分かります ブックメーカー

 では、芝生まわりをウロウロ。
 人も少ないので、のんびりと芝生でゴロゴロして1日を過ごす、という目的であれば、非常に

芝生エリア ゴール付近ものどかです その先はピクニックエリアとなっております
一番奥側 ピクニックエリアから4コーナー方向 ちょっと移動して広々とした芝生を眺める
 ピクニックエリアの裏手側には、Playground。日によっては移動遊園地が来るのかもしれませんが、とりあえずこの日は地方競馬場にありがちな小さな遊び場だけがあり、大きいお友達も小さいお友達も特に使っていませんでした。

 また、場内には馬運車のおもちゃで遊んでいる子供がいました。こんなのあるんですね。私が知らないだけで日本にもあるのでしょうか。
遊具 一瞬救急車かと思ったけど
キャンピングカーかな?
馬運車を動かす少年
 スタンドの裏側には、パドックとウイナーズサークル。ここはパドックとウイナーズサークルが分離している、日本人には見慣れたタイプです。スタンドが長細い代わりに、裏手のスペースが案外広めになっております。
ウイナーズサークル方向をぐるりと 表彰式の様子

 ウイナーズサークルがスタンド側にあり、そこから観戦用の高台を挟んで反対側がパドックとなっております。プレパレードリングは、本馬場入場用の馬道を挟んで反対側、Owner & Trainer Bar側にあります。ウイナーズサークルを見下ろす高台以外は平坦です。大レースがおこなわれるわけでもないので、平坦でも特に問題はないのでしょう。

Pre Parade Ring Pre Parade Ringとパドックを結ぶ馬道 パドックにあった馬の見方
パドックにあるけど写真は
返し馬中っぽいのはご愛敬
Parade Ringを見下ろす 高台を降りたあたりから Pre Parade RingからParade Ringにはいってくるあたりから
 その他、スタンド裏手にはイギリスあるあるなスイーツショップ(多分ビーンズとかそんなのが売られている)と、ソフトクリームを売るキッチンカーがきておりました。サンダウン競馬場なんかでも見かけましたね。イギリスの街中ソフトクリームを買う機会は多くないので、おっさんは嬉しそうにソフトクリームを頬張るのであります。
 そして、嬉しそうにメモも残してました。曰く、
- ソフトクリームは生クリーム感が強い

うん、読んでも意味が分からんぞ。食レポのセンスが皆無なことがこうして分かってしまうのですな。

スタンド裏 甘味屋 ソフトクリーム屋 ソフトクリーム

 では、レースです。


北アイルランド旅行


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